something more precious

01


continent(大陸)の皇帝が住む城では20歳になる1人息子の誕生日パーティがあり、各国の国王達が全員集まっ
ていたホールに、今、神のお告げが告げられていた。
『continentの次期皇帝となるテヅカクニミツに告げる。汝の后候補は3人。セウフィ国のレイ、スタバニ―国のケイ、
そしてエチゼン国のリョーマ。』
お告げが終るとホールは人々のざわめきが広がっていた。娘が后候補として呼ばれた国王は自慢して回ったり、い
かに自分の娘がすばらしいか言いまわったりして喜んでいた。娘の名が呼ばれなかった国王は傍からみても落ち込
んでいたり、喜んでいる国王を羨ましげに見たり、取り入ろうとしたりしていた。そんな中、1人の女性の国王は溜息を
ついていた、エチゼン国のスミレである。彼女の溜息の元凶は今しがたお告げに名前が呼ばれた自分の娘のような
姫だった。






























「やだ!!!!!絶対やだ!!!!!!」
スミレが自国に帰り、姫にお告げに呼ばれたと伝えると、即反対された。
「リョーマ、これは決定なんだよ。」
「やだやだやだやだやだやだやだ!!!!!」
スミレが説得しようとがんばっているが、リョーマはやだの一点張りで納得しようとしない。
「神のお告げなんだから、従わないとだめなんだよ。わかってるだろ?」
「・・・・・・・・・・わかってるよ、そんなこと。でも、いやだ。」
「リョーマ。仕方ないんだよ、それはこの大陸出来た時からの決まりなんだから。・・・出発は3日後だからね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでなんだよ・・・。どうしてわかってくれないんだよ!!!テヅカクニミツの后にはなりた
くないのに!!!!」
そう叫ぶとリョーマは走って自分の部屋へと帰ってしまった。
「リョーマ!!・・・・・・・・・まったく、あいつは。・・・まぁ、あいつの気持ちもわからんではないが、こればかりはな。」
「スミレ様・・・。」
スミレが溜息をつきながら言うと、そばにいた大臣が心配気にスミレに声をかけた。
「大丈夫でございますか?」
「ああ、大丈夫だ。・・・・・・・いくらリョーマが嫌がってもこればかりはな。」
「そうですね。しかし、姫様もおかわいそうに。」
「運命とは時にひどいものだな。・・・・・・・大臣、3日後出発する。準備をしておいてくれ。」
「かしこまりました。」
大臣はそう言うと一礼して準備に取り掛かるために退室した。
そこには、スミレの溜息だけが残った。
















そして3日後。
結局この3日間リョーマは部屋から出てこなかった。食事はコックがリョーマの部屋の前に置いておき、食べ終わった
頃を見計らって食器を引きに行くという感じだった。その間、食事は全部食べてあった。いつもは少し残すのに・・・。





出発は正午だった。現在は11時半。
スミレは城の正門の前で待っていると、しばらくして、正装したリョーマが現れた。
「準備は整ったかい?」
「うん。」
「ちゃんと出てきてくれたね。」
「うん。」
「似合ってるよ。」
「うん。」
「リョーマ。」
「・・・・・・・・何?・・・・・・・」
スミレの言葉にうつむいて無表情で答えていると、スミレに名前を呼ばれたので少し顔を上げた。
「・・・・・決心できたんだね。」
「・・・・・・・・・・・。」
少しの沈黙の後、リョーマは顔を上げてはっきり言った。
「行くのはスミレさんの為、死んだ父様と母様の為、この国の名を汚さない為だ。テヅカクニミツの為じゃない。自分自
身の為でもない。それに、まだ后になるとは決まってないし。」
「確かに后候補は3人だ、その中から好意を寄せられた者が后となるんだからな。でも、リョーマ、お前はそれでいい
のか。」
「うん。」
「そうか。」
スミレの言葉を最後にその場に沈黙が訪れた。しかし、リョーマに付き添う従者が時間だと告げたので沈黙は終っ
た。
「じゃあな、リョーマ。」
「うん、じゃあ。」
スミレとリョーマはお互いにあいさつをしてリョーマは馬車に乗り込んだ。
「リョーマ。」
スミレはこの国の王の為、この国から離れないので、ここでお別れだったから、馬車の窓に近づきリョーマを呼んだ。
「ん?」
窓から顔を少し出してリョーマが答えた。
「私はお前のことを本当の娘と思っているよ。」
スミレの言葉に少しびっくりしたあと、リョーマが言った。
「俺も、スミレさんのこと2番目の母様だと思っているよ。」
「ははは、お前らしいね。・・・・幸せにおなりよ。」
スミレが笑ったあと言った言葉にリョーマは少し悲しい顔をして言った。
「俺はテヅカクニミツとは幸せになれないよ。」
「リョーマ・・・・・。」
「じゃあ、行くね。」
そう言って、リョーマはエチゼン国を出た。